MENU

どんな法律事務所に相談するのがいいのか

弁護士になってから、地元の友人や昔の知り合いから、「弁護士に相談したいんだけど、どこに相談したらいいか分からなくて。何かコツはあるの?」と聞かれることが多くなりました。
インターネットが普及し、弁護士が急激に増加している昨今では、ネット検索をすれば多くの弁護士が出てくるようになりました。
こういった要因から「どういう基準で弁護士を探せばいいのか分からない」という声をよく耳にするようになりました。
本記事では、今まで弁護士に相談したことがない方へ向けて、事務所ごとの特徴等をご紹介していきます。

※本記事は、私の個人的な見解に基づいています。様々なご意見や視点があるテーマですので、一つの見解として参考にしてください。

目次

①事務所の所在地

現在、私の所属事務所は横浜市内にありまして、神奈川県内の相談者・依頼者が多数を占めています。東京に本社がある企業の相談を受ける時に、しばしば耳にするのが、

「本社の顧問弁護士が東京の法律事務所なのだが、移動に時間がかかるし、本社の決裁が必要で、気軽に相談できない」

という不満です。
顔が見られる、相談しやすいというのは、特に顧問弁護士をお考えの方にとっては、大事なポイントかと思われます。

近年、IT技術の発展やWeb会議の普及によって、オンラインでの相談や打ち合わせも容易になってきました。
そのため、物理的な距離があっても、オンラインでやり取りができれば十分、という考え方もあろうかと思われます。
特に、インターネットビジネスを主力としている企業に多い印象です。

このように、事務所が近い方が良いか、つまり面談のしやすさを重視するかは、ご相談者の考え方や、企業の場合は業種にもよる部分があります。

それと、ご相談・ご依頼の案件の内容にもよるところがあります。
例えば、私は雇用主側の従業員トラブルをよく扱っていますが、展開によっては対象の従業員と面談することもありますので、物理的な近さは重要でしょう(もちろん、遠方でも公共交通機関で移動はできますが、弁護士は丸々一日何もない日はほとんどなく、日程の組みやすさが全く違います。)

②特化分野

一般の方には不思議に思われるのが、医師における内科・外科のような専門分野の限定が、弁護士には明確にありません(その賛否は別として)。
例えば、目の異常があれば眼科を受診しますが、弁護士の場合は、そのような思考で探せないこともあります。

これは一般の方にとって不都合もありまして、それが理由かは分かりませんが、近年では、特化している分野を設ける法律事務所が増えてきました。

とりわけ、都市部に多いのが、特定の分野を集中的に扱う事務所でして、知財、船舶、渉外取引などが代表例ですね。

相談したい案件を取り扱っている(とホームページに載せている)法律事務所の絶対数が少ないなら、特定分野に集中している事務所に相談するのが無難でしょう。

反対に、都市部以外に多いのが、特化分野を持たない、オールマイティ型の事務所です。

キャッチコピーは「何でもお気軽にご相談ください」が多い印象です。
対応の幅が広く、相談を受け入れてくれることが多いですし、依頼後に別のトラブルが発生した時にも、続けて対応してくれることが多いです(いずれも案件の内容によりますが。)。

多くの方に意外だと言われるのが、都市部ではない事務所の弁護士は、都市部の弁護士よりも幅広い経験をしていることが少なくありません。
私の体験談ですが、かつて、弁護士過疎地(地域の人口に比べて弁護士数が少ない)で執務をしていた頃のお話です。
弁護士の絶対数が少ないため、何でもやる必要がありまして、その中には裁判所から選任される破産管財人や相続財産清算人等の業務も含まれます(説明すると長くなるので詳細は割愛させていただきます。)。
都市部の弁護士が申し立てた件の管理人をした時、その先生も経験がないせいか、かなり的外れな主張をしてきて驚いた記憶があります(業務の範囲外のことを求めてきたり聞いてきたりしまして、頭が痛かった記憶があります。)。
特定の分野に特化しているのがよいかどうかは、メリットデメリットがありますので、ご自身の中で何が大事かを意識して、決められるのがよろしいかと思います。

③規模・弁護士の人数

全国展開している大規模事務所

法律事務所に限らず、「全国にある」「大きな企業」というのは、それだけで安心感がありますよね。
ホームページでは弁護士がたくさん名前を連ねていて、頼りがいがありそうな印象を受けますし、全体でたくさんの知識や経験を持っていて、案件を適切かつ迅速にこなしてくれそうな予感がします。
全国展開している規模の事務所は、その大半が、弁護士業務のシステム化を進めていて業務効率が良いですし、クオリティの統一化が図られていますので、どの支店事務所で依頼しても同じサービスを受けられるメリットがあります。

スケールメリットは他にもありまして、仮に担当の弁護士が急病等で対応できなくなっても、他の弁護士がカバーできることも多く、最後まで付き合ってくれるのは安心ですね。

反対に、規模が大きいが故の難点もいくつかあります。
クオリティの統一化が図られているため、個別の案件に応じて対応を変えられないことがあります。
弁護士の業務は、依頼している人・企業によって考え方は違いますし、似たような案件はあっても全く同じ案件はありませんので、個々の案件ごとに進め方や適切な解決は異なるものです。
そういった案件ごとの差異を均一化して、同じように処理したがるため、方針が妙にずれていたり、特定の方針にこだわってしまったりします。
私は何度か、大規模事務所の弁護士が相手方の代理人になったことがありますが、解決できそうになっても「他の案件ではそのように対応していないから駄目だ」と言われて、合意ができずに長引いたケースがありました。

それは本当に依頼者のためになるのかと、首を傾げたものです。

それと、確かに事務所全体で見ると取扱件数は非常に多く、豊富な知見があると思われがちなのですが、現実の案件対応に活かしきれていない部分もあります。
全体で事案を蓄積して、それをもとに対応策を体系化したり、マニュアルを作成したりしているのですが、そこまでしても、現場の弁護士や、現場を指揮している弁護士が使いこなせるかは別の問題です。
弁護士は職人のようなもので、自ら経験して得た知識や技術でないと、活用することが難しいのです。

それと、弁護士の人数が多いということは、それだけ入れ替わりも激しいということですから、知識や経験がうまく承継されていなかったり、分散してしまったりする確率が高くなります。
人数が多すぎると、会ったことがない、一言挨拶したことしかない、という弁護士すらいまして、弁護士同士の交流が希薄になったり偏ったりしてしまうため、ノウハウの共有が現場で使えるレベルまで落とし込めないことに繋がるのです。

ちなみに、相談や打ち合わせで対面する弁護士と、実働の弁護士が違うという、分業型の事務所もあります。 それを良しとするかは人それぞれだと思いますので、よく考えてみるとよいでしょう。

1~2人の小規模事務所

先ほどご紹介した大規模の事務所は、「事務所」に相談・依頼するという感覚ですが、これに対して1~2人の弁護士がいる事務所の場合、「その弁護士」に相談・依頼するという感覚です。
まさに「職人」といえる弁護士が事務所を構えているといえます。

その弁護士に豊富な知見があれば非常に頼りになりますし、人柄が良いと思われたのなら、その弁護士を信頼して進んでいくことができます。
基本的に、弁護士と事務所は一体になっていますから、「突然、担当の弁護士が退所してしまった」という事態は考え難く、最後まで面倒を見てくれる安心感がありますね。
それと、大規模な事務所と比べて、弁護士との心理的な距離感が近くなりますので、弁護士と話しやすい環境と言えるでしょう。
依頼した弁護士は、一件ごとに、どのような方針がよいか、どのような解決がよいのかを考えていますので、柔軟な解決にも応じてもらいやすいという特徴があります(もちろん、法律の専門家なので限界はありますが…)。

少ない人数で業務を行っている以上、物理的に、扱える事案の数には限りがありまして、知識や経験の総数は、大規模事務所と比べて少ないと言わざるを得ません。

また、可能性は低いのですが、仮に弁護士が体調を崩してしまうと、引継ぎ先が事務所内にいないことが多く、別の事務所に変更しなくてはならない(また一から説明し、信頼関係を築かなくてはならない)という負担が生じます。 あと、失礼かもしれませんが…内装や什器備品にコストをかけてらっしゃる事務所は少なく、気になる方はいらっしゃるかもしれません。

中規模の事務所

先に紹介した、大規模の事務所と小規模の事務所の中間は幅が広いため、一律に論じがたいのですが、所属している弁護士が10人前後の事務所を想定してお話します。

弁護士の人数や、事務所の風土によりますが、弁護士はお互いに顔を知っていて、事務所内で相談しながら、(無意識も含めて)経験やノウハウを共有しながら、案件対応をしていることがあります
大規模事務所のようにマニュアルを整備したり、ノウハウを共有するシステムを構築したりはしませんが、それぞれの弁護士のそれぞれの経験をもとに、時々相談し合っているという話を聞きます。

ここまで書いておいてなんですが、中規模の事務所は色んなスタイルがあるので、今までの話が当てはまらない場合もあります。
同じ事務所と言っても、弁護士間にさほどの交流がない事務所もありまして、単に同じ場所を借りている他人同士ということも少なくありません。 同じ場所に集まっているだけという事務所の場合、全体の人数はそれなりなのですが、個人事務所が一か所に固まっているというのが実態で、メリットデメリットは小規模事務所と同じと考えた方がよいでしょう。

④弁護士費用

よく「費用がお得な事務所を教えて」と言われるのですが…弁護士業界の費用の自由化がされて以降、いろんなパターンが現れるようになっていて、私は把握しきれていないというのが本音です。

弁護士費用の方式は、大まかに二通りがあります。

一つは、着手・報酬方式でして、これが弁護士業界のスタンダードです。

依頼時に一定額の費用を払う、これが「着手金」というものです。
活動そのものに対する費用で、結果にかかわらず支払う必要があります。
一般の方からすると、結果が出ていないのに金を払うのか、という疑問があるかもしれませんが、一般的に珍しいともいえないのです(例えば、家を建ててもらう場合、依頼時、と完成時に代金を支払うことが多いように。)。

活動終了時に費用を支払う、これが「報酬」というものです。
報酬は定額のこともありますが、得られた結果に応じて支払うことがほとんどです。
例えば、回収したお金の10%と決めていて、100万円を弁護士が回収した場合、10万円が報酬額です。

ちなみに、相談時に「トータルで弁護士費用がいくらになるか教えて」と言われることが多いのですが、弁護士としては回答に困ります。
結果が出ていない以上、完全な予測はできないですし…最大値を伝える方法もありますが、それはつまり最大の結果が出た場合を想定しての話でして、その結果が約束されているかのように誤解・期待される方も少なくないので、弁護士は慎重にならざるを得ないのです(お互いのために)。

もう一つは、タイムチャージ方式でして、企業案件の場合に採用される傾向にあります。

「活動1時間あたりいくら」のような決め方でして、弁護士の活動時間によって費用が変わってきます。
着手・報酬方式と比べてどちらが得かというと、終了までの期間にもよりますので、事前には分からないことになります。
(依頼時に契約内容を決めなくてはならないので、終了時にどちらかを選ぶことはできません。)

負担が軽いのがどちらかは結果論になりますので、ご自身の負担感(価値観)や業務の性質に応じて決めても良いかもしれません。
なお、ご依頼の案件についてタイムチャージ方式を採用していないケースもあり得ますので、必ず選択できるわけではないことをご了承願います。

まとめ

法律事務所ごとに様々な特徴があり、一長一短です。
ご自身の考え方(何を重視するか)や相談事に応じて、決めていただくことになります。
本記事では、それぞれの特徴を個人的な見解で解説していますので、参考になれば幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次